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    • 2014.11.05 Wednesday
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    【月に笑う 惣一編】 同人誌

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      私、ちゃんと木原さんの作品を読んだのが【月に嗤う】でした

      梨とりこさんのカラー表紙の繊細な美しさに思わず手を取ってしまった
      その時、このヤクザの惣一がすごく気になったのですよ

      美形で頭がキレて冷静で冷酷
      そのくせ女に後ろをほってもらってる変態

      面白いキャラ造形だな〜と思いました
      ただ、惣一をPニバンで掘る女王様が
      「あの人男の人なのに入れられるのが好きな変態なのよ」
      みたいなことを言っていて(手元に本がないので曖昧でスイマセン)
      本当のプロの女王様ならそんな風に言わないのにな〜
      キレ者の男なんだから質のいい女王様を選ぶはずだけどな〜
      てな、感じにモヤモヤしたのです

      BL関係なく、女王様が男の後ろを攻めるのは
      メジャーや定番ではないにしても、そんなに珍しいプレイではないらしいです
      (風俗のルポや女王様やった人の面白エッセイや
       何でもやる女漫画家の女王様体験記みたいなどで
       実際の女王様の仕事っぷりがわかる本を何冊が読んでいたので)

      木原さんはソコラ辺も含めて現実的に話を書く人なので
      「あれ?どうしたんだろ〜」と思っていので
      その疑問も含めて惣一の番外編が出る!と知って、同人誌を追いました
      完結するまでは読まない!と決めていたので
      読むまで保管し続けて半年以上かかり、つい先日読み終わりました



      イヤ〜・・・
      今まで読んだ木原作品で一番好きでした
      そして、何で単行本化じゃなくって同人誌で出したのかもわかった


      女に後ろ掘られるのが好き→男にヤラれる
      BLだとここの移行にそんなに葛藤はありませんが
      実際はやってる行為が同じでも相手が女か男かは重要!
      後ろを使うのと男と出来るのは別で、絶対男はイヤな人もいるわけで
      惣一はどうやってここいらを乗り越えたのかな?と思っていたのですが


      もう初っ端の一冊目から木原さん飛ばしていました〜

      惣一が自分の警備に神経質になる理由
      指詰めさせた奴が恨んで
      家に押し入られRYO辱されまくってそれがトラウマになっているのです
      この描写が・・・近年のBLに見ないぐらいねっちり書かれていて
      軽くGO問ぽくもあり、しかも木原さんの冷静で現実的で
      赤裸々にわかりやすく書く文体で仔細に表されているのです
      とことん愛情なくビビってる奴を情け容赦なくいじめ尽くす
      快楽とかもないという徹底っぷり
      酷く受けが可哀想な話を書く水原とほるさんでもここまで書かないよ!という
      私の唯一のトラウマbl小説かわいゆみこ【帝〜MIKADO】の
      RYO辱シーン並みに痛い痛い辛い辛い感じでした


      さすが【HOPE】書いた木原さんだな〜
      でも、なんでしょうか酷いんだけどその酷さの中に萌がある気もする
      【帝〜MIKADO】は苦しすぎて読み終わった後怖くて
      本自体手元に置きたくないぐらいだったんですが
      木原さんの惣一の酷いシーンは読み返せるし、BLにしちゃ酷いけど
      なんというかRYO辱萌みたいな
      ちゃんとBLしていてその落とし込みがさすが!でした
      本当に徹底的に痛めつける系だと
      私はBLじゃない「疾走」「笑うY崎」が飛び抜けてやりきっているので
      (二冊とも文学賞作家さんです)
      BLとしては酷いけどBL意外の小説でもくくるとそうでもないかな?
      「帝」はBL意外のところから考えても酷いので
      私は今回の惣一編は「程よいな〜」と思いました

      しかも、私が読みたかった後ろを掘る相手が「女→男」に変化する理由が
      ちゃんとうやむらにせずに書かれていたのが良かったです
      惣一は元から男が好きで、でもそれを否定するために女に男役をやらせていた・・と
      それが死の淵に立ち、残虐に無理やり男にヤラれることによって
      閉じ込めていた性癖が暴かれていく過程が良かった
      男を意識していく過去の様子とそれを封じ込めようとする葛藤が
      M島「仮面のK白」みたいだったな〜
      鉄棒する同級生の腋毛にムラムラするゲイっぽさから
      不良っぽい生徒の革手袋の温もりにトキメク胸きゅんと
      生々しさとリリカルさが微妙に入った感じがあったのです


      で、死にかけるほどの傷を負った惣一は異様にビビリになり
      自分の恋人(女)すら信じられなくなる
      私がプロの女王様だと思っていたのは、恋人だったのです!!
      ここで、本編を読んだモヤモヤもスッキリ
      プロじゃないなら、軽蔑心があってもしょうがない

      そんな惣一が唯一信頼しているのが攻めの嘉藤
      女とできないけど性欲はある、でも他人を信用できない惣一は
      玩具で自分を慰めていたのですが
      旅先で大人の玩具を忘れたことから嘉藤本体が玩具代わりをすることに
      丁寧に自分を感じさせてくれた嘉藤に元から憎からず思っていた惣一は
      前から望んでいた男同士の強い快感にメロメロになってしまいます


      で、ここからが本当の木原節
      あんなに情熱的にやったのに、この嘉藤全然惣一に恋愛感情がない
      本当にない、欠片もない

      トップとして尊敬しているから自分に対して女のようになって欲しくない
      性欲は強いのでヤレることはヤレるけど女のほうが男よりいい
      正直、壮一の恋情は自分にとって邪魔でしかない!と
      そのために他の男を惣一にあてがうのです

      惣一は目隠しをして相手に黙って抱いてもらって
      嘉藤だと思おうとするところなんか、切ないぐらい一途です

      でも、淫乱だし報われないしで男咥えまくりヤリまくり
      ここで普通のBLなら攻めも受を好きになるんですが
      「新しい男調達するの大変だな〜」とか
      「ヤリまくると昼間はキリッとしてるからいいか」と
      本当に惣一に対して愛情はないんですよね〜

      その反面「女みたいに独占欲が強いから情人になるのイヤだな」と
      嘉藤が思うのはわかる
      別にどうしても嫌なんじゃなくって惣一が自分に惚れてるから嫌なんです
      体だけの関係で割り切れるならいいとおもってる
      父親は「あいつは腐った桃だ。周りまで腐っちまう」と言うのも納得
      それぐらい惣一はどうしようもない程、根がねちっこく情念が深い淫乱

      男漁りが周りにも噂になって
      醜聞を消すのと男アソビを辞めさせるのに女との縁談が持ち上がる
      でも、それを自らぶち壊し
      嘉藤は組長直々の命令と自分で見切りをつけて惣一から離れていく



      で、二年後戻って来ても相変わらず惣一に愛情とかないのね〜
      これが普通のBLなら何度もフラグが立つところで立たない!!
      組長は惣一の器に見切りをつけて、嘉藤に次の組長指名した後に
      何者かに襲撃されて殺される
      そこで、惣一は組をまとめあげてオヤジの仇討ちを誓う

      このあたりの裏切り者への追い込みと
      やりとりもBLなのに緻密で面白かったです
      ハードボイルドや暗黒小説好きは気にいるんじゃないかな〜


      で、ま〜色々裏切りやらなんやらあってオヤジの仇討ちは成功するんですが
      それより衝撃的だったのが

      「惣一に女の胸ができている!!」

      昔、ジュネ?で好きな男のために女になる話があるそうですが
      ジュネは結構女が絡んでもいいんですよ
      基本、男同士だけど「恋愛」がテーマではなく
      「愛増が絡んだ人間のドロドロ」=「JUNE」だから
      ドロドロを表すのに男にはない女の執念や怨念は必要だったりする
      なんというか、女のが基本ドロドロしていると思うんですよね
      それは、男に持ち得ない女の性(さが)みたいなもので
      男同士をドロドロさせるのに女h必要だったりする
      昔のジュネ作家で有名な作品でも女が出張る
      山藍先生「長恨歌」とかね〜
      吉原先生「渇愛」も女がすごい

      でも「BL」=「ボーイズラブ」=「男同士の愛」だから
      どんなに綺麗で見た目女っぽくて乙女でも男じゃないとダメ
      ドロドロ愛憎劇がメインではなく「男同士の愛」だから
      そんな「ジュネ」でなく「BL」な昨今
      受けに女の肉体的特徴をくっつけるというね・・・・
      もうコレはBLというくくりの中ではないですよ
      (ジュネならあり)


      最初の出だし→このラストまでを思うと
      こりゃ、同人誌じゃないと厳しいかもと思いましたよ

      あと、私が読んだ木原作品の中では一番エロが多く
      結構やってることも描写もあけっぴろげなのに
      余りエロくない?ですよね
      いや、エロいんだけどその他のシーンと同じテンションで読める
      萌がない、何故なら攻全員に愛情がないから

      BLにおいて攻めじゃないやつとエロがあっても
      意外と「綺麗な男だな」とか「昔から好きだった」とか
      「コイツとやりたい」とか受に対して思い入れがあるんですが
      もう本当、この話は攻め含めて受を処理相手ぐらいにしか思ってない
      だから萌ないのかな〜

      でも、それが悪いんじゃない
      人の薄汚いけどどうしても捨てられない情とか
      残忍になのに、そういう人が持つ優しさとか
      キラキラしたBLじゃない、人の情けない惨めさが書かれてる
      エロってある種、滑稽なところがあるじゃないですが
      でもblではそういう滑稽さを出さないのに
      木原作品は生々しい滑稽さを書き出しているんですよね
      だから、エロくてもエロじゃない部分に目が行く


      最後のラストも何だかな〜
      木原さん的にはラブラブなんだろうけどラブラブか?
      惣一は幸せそうだからいいのかな
      「組長として立派で自分の理想の尊敬できる惣一も
       本来の女の腐ったような惣一も受け入れる」という嘉藤
      これはこれでスゴイことだし

      何かで「男に性欲と情はあるけど愛はない」と言うのを聞いた
      長く付き合うと「情」が沸くから大事にするけど
      「愛」とは違うから「性欲」や「恋」の高揚感に負けて
      他の女に行ってしまう男もいる・・・・とか
      でも相手に深い「情」を持つと他に行くのを我慢するとか?

      これが正しいとは思わないけど
      嘉藤はそんな感じがしました
      惣一に恋愛はしてないけど、可愛いと思って大事に思う情はあるっというか
      惣一の粘り勝ちですね






      なんというか、いつも私は木原さんの作品は
      「少し物足りないな」という部分があって
      それがいつも「色々あってもBLらしさに落ち着く」ところなんだけど
      今回は突き抜けていた分妥協がなくって良かったです
      やっぱり商業用だと色々チェックが入るんでしょうね
      それがいい場合もあるけど
      木原さんみたいにキチンと自分の文章を制御できる方は
      好きなようにやらした方がイキイキするような気がしました
      (崎谷さんは反対に編集さんもっと仕事して・・・・)


      私の読んだ中でで一番面白い木原作品でした
      梨とりこさんの挿絵付き&一冊にまとまったものを読みたい気もしますが
      商業モノとしては厳しいかな・・・

      「薔薇色の人生」も読みたい










      【WEED】木原音瀬

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         CD聞いて何だか色々納得いかなかったので小説購入
        CDの感想はこちら→【WEED】


        金ひかるさんの挿絵も見たかったのです
        何だか好きなんですよね〜、この方の絵が昔から
        ただ、絵自体は好きなんだけどキャラとしてあっているのか?というと
        主人公の若宮が可愛すぎる気がする
        若宮は背丈がバリ攻めぽい谷脇とそんなに違わないと書かれてるし
        「美形でかっこいい」と周りから言われてるのに
        (岡田のアパートの前で会った時に一緒にいた同僚が言ってるのです)
        絵柄だと『細くて美人で可愛い系』なんですよねぇ
        本を読む限りだと若宮岡田がどっちが攻め受けかわからないような形容の仕方なのに
        挿絵だとバッチリどうみても若宮が受け受けしい

        まぁ。でも絵自体は本当に好きなのです
        熱をだしている岡田を看病するスーツ姿の若宮の挿絵とかすごく好きだし
        谷脇がGAN射した若宮の顔を舐めるカットとかも色っぽいです
        木原先生の脳内イメージにもピッタリみたいですし悪くないんですが
        どうも文で表現されている若宮と挿絵に隔たりを感じてしまいました・・・・
        岡田も文だともうちょっと中性的で細身な気がするんですよね〜
        谷脇だけはバッチリイメージ通りだった!



        CDでは岡田が恋愛体質と言いながらも
        まったくもって執着心や粘着質なところや重い愛情表現とかがなくって
        「どこが恋愛体質なんだ?
         若宮ばかりがモヤモヤした恋愛感情に振り回されてる気がする
         もっと岡田が愛情を注げばここまで疑り深くならないんじゃないか?」
        と思ったんですが
        小説では岡田の愛情の深さや静かだけど確かな執着心とかが見えました

        私が攻めの執着愛が大好物なのと
        それを感受してメロメロになっている若宮も可愛かったので
        ここいらをもうちょっとじっくりCDでは聞きたかったですね〜

        あと、色々小さいエピソードがずいぶん省略されているのもわかった
        「若宮は嫉妬深い女々しい男だなぁ」とCDではうんざりしましたが
        小説読むと違う意味でうんざりする男だとわかった
        小説でも女に嫉妬してるんですが、自分でもそんな嫉妬してるのがおかしい
        岡田が本当の意味で浮気してるわけじゃないし
        浮気するタイプでもない
        今は自分を愛していて、自分に嘘をつかないのを知っているんです
        それでも岡田を信じきれずに些細なことでイライラする自分に
        若宮自身が戸惑って不安になって
        心のどこかで不安になるのは自分が悪いとわかりながら
        その解決方法がわからないし、岡田が何も悪くないのを知っているからこそ
        『そんな自分のイラだちを何も知らずに変わらずに愛してくる岡田にムカツク』悪循環


        小説の方が女に対する嫉妬というよりも
        根深い若宮の人間不信?みたいのが感じられました
        岡田を信じられない自分に苛立っているのに
        その怒りを岡田にぶつけてしまい
        無責任に怒ってる若宮のことを岡田も持て余して
        若宮の言うとおりに距離を置いたり、離れたりしてみるものの
        それがますます若宮も寂しくさせ苛立たせる

        面倒くさい男ですね・・・・
        そして、意外にもこういうタイプの女いますよ!
        知り合いに美人で可愛くて性格良くてモテる子がいまして
        本当女の子に対してはすごく接しやすいしわかりやすいんですが
        男に対しては面倒くさいんですよ
        そのモテ子自身気になってる男がいて、その男からデートに誘われると
        嬉しいのに、OKできる状況にあるのに断る!
        二回目誘ってきて、やっぱり嬉しいのに断る!
        モテモテで他の男からも人気の女から二回も断れたら男は心が折れますよね?
        「何で断るの?好きならOKしてデートだけでもしてみたら〜」て聞いたら
        「断っても断っても強引に何度でも誘って欲しいの!!
         私が仕方ないな〜って態度に出るまでめげずに誘って欲しいの・・・・
         でも、みんな2回ぐらい断ると誘ってくれなくなるんだよねぇ(-_-;)」
        そりゃそ〜だろうよ!!!


        あとは、彼氏の前カノが気になってしょうがなくって
        別れて半年経つのに自分の前で前カノに彼氏から電話させて
        「俺、もうお前のこと好きじゃないから」と言わせた女とか
        (前カノから貰ったものや写真なども全て処分させた
         そのクセ、自分は前彼との思い出をとっとくというね・・・・・)

        彼女ら2人からしたら、それが究極?の愛情確認だったんでしょうね
        付き合う男は大変だ〜
        でも、そこまでしてもちゃんとした安心は得られないみたいで
        いっつも二人ともモヤモヤしていました



        そう思うと若宮の行動や思考は何となくわかるような気がする
        共感はできないけど
        「こういう考えの女いるよね〜」みたいな
        なので思ったより【EVER】はラブラブに感じて読めました
        絡みの書き方や文体が淡々としていますが
        以上に愛情確認したがる若宮が岡田に愛されてるのに納得がいかずに
        一人で暴走して、でもやっぱり好き!!みたいな
        岡田視点だったらわがままで可愛い恋人に振り回されてる
        もっと淡々とした話になってだんんだろうな〜



        よく木原さんの作品が純文学だ!と言われたりすると
        私は何だか違うな〜っと思うんですよね
        それは文体とか表現とかは好みがあるし、評論家じゃないので言及できませんが
        木原さんの作品をそこそこ読みまして
        そこの根底にあるのは【一途なんだけど綺麗なだけじゃない執着愛】なんですよね
        【執着愛】は良くBLに出ているんですが
        木原さんが他と違うのはエロや「こんなに愛されて幸せね」という安易な萌にしない
        そして、どんなものでも【愛なら美しい】となりやすいBLというジャンルの中

        美しくない愛情 
        歪んだどうしようもないけど一生懸命な愛情
        普通では理解しがたい形の愛情

        そういう普通のBLでは表現しないタイプの愛情を取り上げている
        そこに木原さんの独特の読みやすいんけど淡々として冷めていて
        でも、フットした瞬間に熱いものが滲んでいる文体が合わさって
        他作家にはない世界観を表している
        この世界観は木原さんにしかない
        BL小説でこういう作風は木原さんしかない
        そして美しいし良くも悪くもすごく印象に残る
        萌自体を救いとるのが難しい
        色んな要素が絡みあって「BL小説というカテゴリーで比較できるものがない」から
        「この痛々しくても美しく独特の世界観は純文学じゃないのか?」となるのかもしれない
        でも、純文学ではない・・・・と私は思うんですよねぇ
        (私がそう思うだけなんですけどね・・・・
         A川賞作品を50作以上読破、月10冊前後の読書、昭和大正作家も好きだよ!みたいな方が
         木原さんの作品を読んでどう思うのか聞いてみたいです!
         BL以外も乱読する活字中毒みたいな読書家の感想が知りたい〜!!
         それも一人じゃなくって色んな人の感想を)


        私がどうも引っかかるのは木原さんが書く【執着愛】
        それを持つ人物の性格、その愛情を向けられる人物、二人での物語
        その時々の気持ちの揺れ動き、二人の関係性、物語の展開
        そういうのは毎回キチンと書かれている
        理解しがたい人物でも心惹かれる、読み込ませるものがある
        それによって、読者はこのわからない人物を理解したい!と思える
        その筆力?人物造形は木原さん素晴らしいんです

        ただ、毎回思うのが
        「何故、その人物にそんなに強い執着愛を持てるのか?」がわからない


        今回も若宮が何故に岡田を好きになったのか?
        岡田の若宮への深い愛情はどこからくるのか?
        わからない
        名作【箱の中】【檻の外】でも堂野の清らかさに喜多川は触れ執着するが
        それは本当に堂野じゃなければダメだったのか?
        優しく慈悲深い女性でもいいのではないのか?
        まだ、堂野は喜多川を受けいれるけど
        もし妻が不貞をせず子供が存命だったら幸せな家庭と喜多川
        どっちを取ったのだろうか?

        などなど、他作品でも色々思うところがありますが・・・・・
        愛情が生まれて、その後の経過を描いてはいますが
        それ以前の「愛情が生まれる・愛情を自覚する理由」
        物語の根底にあるそこをいつも書ききってない気がするんですよね
        それは、色んな小説を読んでいても難しいテーマである種の思想的なものでもある
        宗教的にもなりやすいし、精神世界だったり、脳科学だったり
        突き詰めても答えが見えずにわからないんですが
        純文学というのはそういうわからないモノに対して
        作家が思想し思考し突き詰めて問いただしていく・・・・
        読者に問題提起しながら物語にする・・・というのが
        根底にはある気がします

        だから、最初のその【執着愛】ができる段階を書ききってはいない木原作品は
        私は純文学ではないんじゃないかなぁ?と思ってしまうのです
        BL小説なので「愛」を自覚してから展開していった方が物語的には面白いですからね
        エンタメである以上、思想的?になっても仕方ないと思いますし
        私は木原さんの作品は純文学ではないけど素晴らしいと思ってます
        ただ、純文学だ!と言われるのにはいつも疑問を感じていまうんですよねぇ




        多分木原さんは男同士の愛情物語を書かなくても
        素敵な小説を書ける方じゃないかな〜?と思います
        【WEED】は新装版で書下ろしが入っていました
        三部作の谷脇主人公【FLOWER】に関連している短編書下ろしだと思うんですが
        特にメインカプのBL部分に照準があってないのに面白いというか
        心に残るいい話になってるんですよね
        【檻の外】も最後の「なつやすみ」の子供の話が一番、私はイイと思った
        BL関係ない、思いやりとは何か?大切なものとはどういうことか?家族とは?と
        テーマが「男同士の愛情」からそれていた方が矛盾なく表現されている気がした
        そして、それがちゃんと読者の胸に刺さった

        だから、きっとBL小説じゃなくっても木原さんはそこそこ良い小説書けるんじゃないかな?と
        最近は思うようになりました
        あまり木原作品読んでない時はそう思わなかったんですが
        今ではBLや萌がない木原作品も読んでみたくなりました





        「ブルース」というA川賞作家さんの代表作があるんですが
        そこにヤクザで同性愛者が出てくるんですよね
        そいつが主人公を愛しまくってるんですがその愛情表現が歪んでいる
        最後まで歪んでいる
        醜く劣等感の強い外道で冷酷なオッサンヤクザで、気持ち悪いところもあるんだけど
        哀れで怖くて悲しくて、でも主人公に対する深い愛情を感じる
        どうして主人公を愛してるのか愛さずにはいられないのかも分かる


        女性作家さんのN木賞受賞作
        それぞれの家族を描いた短編が全部連なることでなる長編
        兄妹の禁断の愛情が書かれいて
        萌系やBLみたいに最後ハッピーEDにはなりません
        じっとりとした女の情念と思いの深さが何とも言えない余韻がある
        この作家さんの書く女性がいつも苦手で
        文や話自体は好きじゃないんですが、私の好み抜きにして渾身の一作
        自分が嫌いだけど「名作だよ」と薦められる作品


        作家自身がレズで女同士の恋愛小説を書き文学賞も受賞
        女同士の恋愛ものではないんですが
        主人公の医者が難病な息子を抱えた女に惚れて
        家庭も時間も金も全てを女と息子に捧げる
        これ、母親に惚れているようでいて医師が執着しているのが息子なんですよね
        この息子が美しく儚く透明感あるのに暗い魅力がある
        順風満帆な人生をなげうってでも、ただそこだけに自分の全てをかける
        結果が良くないのはわかっているのに投げ出してしまいたい
        その医師の気持ちからラストの美しいまでの絶望


        三作に共通するのは「どんな結果になろうとも愛さずにはいられない業の深さ」
        木原さんの執着愛は重く、業の深さがあるんですが
        「何故愛さずにはいられないのか?」が書ききれてない気がする
        もしそこに焦点があった作品ができたあがったら私も
        「これは純文学だ」と言えるのかな〜どうかなのかな〜・・・・




        BL作家さんって男同士の萌が書ければイイって部分だけだと
        BL絡まない話になると、途端に面白くなくなる場合がありますから
        そうならない木原さんはやっぱりスゴイんだと思います


        んんが!!
        BL作家としてスゴイけど
        小説家としてスゴイか?というと別の話なのです

        【箱の中】【檻の外】

        0
          これは木原さんの代表作品?みたいに色んな所で言われていて
          BL小説読むならいつか読もう!と思っていた作品です
          そして読むなら二作揃えてから一気読みするつもりだったんだけど
          どういうわけか・・・・本屋でもどちらか一冊しかない
          通販でもどっちか売り切れていたりするっと
          中々二冊同時に購入できなくて
          何か知らないけど私の中で購入するのも同時に!て思っていました

          そして、今回読破!
          まず、やっぱり木原さんは扱う題材をしっかり調べてるな〜と
          薬物中毒で刑務所行ったルポライターが
          「俺は文を書くのが仕事だからこれはイイ経験だ!」と
          かなり赤裸々にムショの様子を書いた本があるんだけど
          木原さんのムショの描写がそのまんま!でした
          ちょっと違いますが【朗読者】【海峡の光】とかベストセラー作品でも
          殺伐とした雰囲気が伝わりますが
          BLであって、なんちゃってムショみたいな
          必要以上に酷い状態でもなく、ドリーム入ったBLラブでもなく
          イイ意味で淡々としていた

          内容を軽く説明しちゃうと
          痴漢の冤罪でムショに入った真面目な主人公・堂野が
          母親の罪をひっかぶって殺人の罪で服役していて
          それを苦痛にも何にも思ってないある種純粋な喜多川に
          執着されほだされてく話
          ・・・かな?
          雑な説明ですが大筋はこんなんです
          でも二人のラブよりも堂野の冤罪に対する苦悩が前半を占め
          重〜く暗〜いです
          後半から徐々に二人は近づきはじめて
          喜多川がマトモな感覚を持つ堂野に惹かれて
          今までの人生を顧みて、ますます堂野に執着するとことや
          そこまでされても主人公の攻めに対する気持ちは恋愛ではなく
          同情と何だろうな・・・・憐情も多少あるような
          懐いてくる犬を捨てらない!みたいな感じで
          何かしらの絆で繋がってはいるものの
          ムショから出ていく時に堂野は喜多川に
          自分の居場所を教えなかったくらいなので
          深い愛情って感じではないんですよね〜
          この時から二人の気持ちに温度差があります
          こういう特異な状況じゃなければ
          堂野は喜多川を受け入れなかったんじゃないかな?

          また、ある種喜多川も別に堂野じゃなくっても良かったんだと思う
          初めて喜多川にまともに向き合った常識人が堂野だったから
          その「初めて」の人に盲目的になってしまっただけのような
          真面目常識人で心が広くて喜多川を見捨てない人だったら
          別に女性でも喜多川は大丈夫な気がしないでもない
          こちらも特異な状況下において
          「初めて」を色々喜多川に無意識に与えてしまった堂野だから
          執着してしまっただけでそれは愛ではあるけど
          恋じゃないな〜とも

          なので、どうも私はイマイチ
          二人がお互いを必要とした時に
          「別に本当はこの人じゃなくってもいいんじゃないかな?」と思えた
          こういう状況だから惹かれあっただけのような
          ま〜、その状況ですら運命とか必然なのかもしれないけど
          BLにある「どんなことがあってもお互いの代わりはいない」みたいな
          絶対的な愛情ではない気がしました

          ムショを出た後の喜多川も描かれています
          これね・・・・喜多川がどれだけ堂野に執着してるかを表すには
          とってもイイエピソードだったと思う
          でもねぇ。その前までの冤罪への苦悩をあれだけ書くなら
          出所した後にどれだけ堂野が社会復帰に苦労したか?
          冤罪なのに周りの見る目がどうなったか?
          家族とのわだかまりは完全にないのか?
          そんな苦労の末の再就職
          全てを理解して受け入れてくれた女性との結婚
          そういうのをもうちょっと書くべきだったと思うのよ
          その中で喜多川を思い出すエピソードとかも入れながらね
          そうしたら続編【檻の外】での喜多川の行動への堂野の戸惑い
          喜多川は大事だけど今の生活を壊したくない小心
          そういう生活に根差した葛藤が活きたんじゃないかな〜?と
          攻め側の執着ばかりを描いてしまったために
          「やっぱりBL小説なんだな〜」と
          勿体ないと思いましたね
          そういうBLメインにやるならば、最初の冤罪への苦悩はもう少し
          浅い描写でもイイと思った
          やるならやり切ってほしかったです


          【檻の外】
          【箱の中】の続編
          結婚して子供が出来た堂野の元に来る喜多川
          今の生活を壊したくないけど、喜多川を拒否できないまま
          家族ぐるみで喜多川との交流を深めていくが・・・・
          ある日、堂本の娘が行方不明になり

          正直・・・ますます【箱の中】でやった冤罪への苦悩が何だったのか?と
          そこを掘り下げないならあの重みはなんだったのか?と
          ベースはありながらもテーマ性が前作と一貫性がなくなっています
          シリーズでやるならテーマの一貫性は小説として必要だと思うのよ〜!!
          そして、まぁ最終的に堂野は喜多川を選ぶわけですが・・・・
          その動機?みたいのが妻の不実が原因になってるような
          だったら、もし妻が浮気もしなくて子供もなくならなくて家庭円満なら
          喜多川を選んだのだろうか??
          家庭が壊れたから喜多川の元に行った気がしなくもないです
          そうではないのかもしれないけど
          穏やかで普通の家庭か?
          不毛な、けれど愛のある同性か?
          ちゃんと二者択一にして欲しかったな〜
          ここでも木原さんは逃げてしまった気がしました
          妻や子はそのままの状態で喜多川とどちらを選ぶのか見たかった
          水城せとな【俎上の鯉は二度はねる】とかはガッツリ選ばせてますよね
          同性か?女性か?を
          どちらかというと男性側がややフリな状態で
          また小野塚カホリ【ソドム】とかは結婚は絡まないけど
          一人の男を男女で取り合っています
          そして男はどちらを選ぶか苦悩しています
          BL小説じゃないのだと山本S五郎賞作家の女性作家さんがレズ物
          【感情教育】にて夫も子供もいる妻が女性と恋に堕ち
          周りを巻き込み夫を裏切りそれでも女性の恋人を取るまで
          それをドロドロに切実に描いています
          夫は悪くない、子供を手元に置きたい、でも女の恋人が必要
          そんな貪欲で切実で恋愛に狂って今までの生活を壊すまでを
          目をそむけないで書いてるんですよね〜
          【李歐】はちょっと違うけど
          一人の男に惹かれて人生を投げ出す男が書かれていて
          ま、こちらも妻の描き方が存外ではありますが
          それでも家庭への心の良寄せ方や子供に関してはちゃんと取り入れてる

          平凡で幸せな日常と全てを投げ出す愛なのか
          二者択一だったはずなのに
          そりゃ〜、あんな状態で全ての元凶が妻にあったら
          もう愛せないし、自分だけを愛してくれる方にいってしまうでしょう
          だけどそれは今まで信じてたモノが信じられなくなったから
          絶対自分を裏切らない方にいっただけじゃないかなぁ?
          そういう絶対裏切らないって思わせたのはすごいけど
          能動的に選んで愛したワケじゃないような
          結局【箱の中】の時同様に喜多川の熱情に流されてるだけ・・・みたいな
          何もかも信じられなくなった時に絶対的なモノが無条件にあったら
          それに縋ってしまう程度には人間は弱いと思うんだよね
          確かに全然愛してないなら受け入れられないけど
          少し愛してる程度で弱った時に絶対的なモノが手に入るなら
          それはとても楽なんじゃないかな〜

          全体にここまでの流れや話に関しては
          木原さんの描き切れない逃げを感じました
          BLの中で徹底して書きたいなら冤罪も家族も描き切ってほしかった
          書ききれないならテーマとしてあげないで
          BLの話としての折り合いをつけるぐらいで良かったのにな〜と

          ただ、この後のくっついた後の二人に妻の不倫相手との子供の話
          これは結構良かったです
          この話のラストの締めも好きです

          全体に絶賛されるほどじゃないかな〜?と
          砂原糖子【イノセンス〜幼馴染】
          榎田尤利【夏の塩】【夏の子供】
          色々思う所はあるけど泣いてしまったもんなぁ
          小説的に上手!てほどではないけどテーマの一貫性や
          作者が書きたいことは伝わったの

          でも、この木原さんの作品は小説的には上手で
          ラストとかは書ききっていて好きではあったけど
          ところどころ残念だったし泣けなかったな〜
          冤罪を扱った小説も家庭か?同性の恋人か?の小説も
          一般小説でもっと上手なのがあるからな〜っと
          もっとBLをメインにやったらBL小説として泣けたかも
          色々勿体ない!
          BLとしても一般としても中途半端な気がしました






          【WELL】

          0
             結局この話で何を伝えたかったのかなぁ?と思いました
            私の読解力がないだけかもしれませんが
            どこにテーマがあったのかちょっと判然としない感じが読後残りました

            パニックモノかな?
            世界がいきなり滅びてしまって人がそれぞれエゴに走る
            その中で主従関係にいた主人公とその下僕
            下僕の方は主人公に惚れていて何でもいう事を聞きます
            主人公は足を怪我していて下僕がいなければ生活できません
            ですが、二人の間に愛情は生まれません
            どこまでもドライな関係の中
            下僕くんの心は主人公に依存したまま壊れていく
            彼の為なら何でもするようになる

            別にお話の最後に救いが欲しかったわけじゃありませんが
            続編に【HOPE】と題が付くなら最後に希望の光が欲しかったな
            (希望じゃなくって良い)
            それと作者がすえたであろうテーマ性をハッキリ示して欲しかった
            贖罪なのか懺悔なのか救済なのか癒しなのか愛情なのか
            希望と再生はないにしても
            虚無や絶望や喪失の果てに何があったのか
            その果てには何もなかったなら何もないことを書ききってほしかったです
            そういう意味では書ききってない気が若干残ってしまいました
            もし残った人たちがこれから亡くなるのであれば
            それを暗示したり書いてしまった方が答え・テーマがハッキリした気がします
            そういう安直なラストでなく何かを読者に訴えたかったのかもしれませんが
            私の読解力では残念ながらその訴えがなんだったのか
            作者の意図が読めませんでした
            ただ、こういう作品を書いてみたかったのかな〜?
            「善悪」を問うにしても、もっとそれは突きつめないとダメだと思う
            E藤周作「沈黙」などに比べるとう〜ん・・・・
            テーマの掘り下げが浅く終わってしまったかなぁっと

            あと極限状態の人々について
            BL小説の中では上手にやった方ですが
            「孤島の鬼」ので地下に閉じ込められた主人公が
            同性の尊敬する美形に最後のお願いだから・・・と愛を告白され
            逃げ惑い恐怖に怯えるんですよね
            それまで仲良くしていた自分が男に好かれていたのも自覚していたのに
            逃げられない状態での同性への深い愛情を全力で拒否するのです
            「砂の女」の砂の底に沈められた主人公も
            異性同志なのに関係を持つことを拒否しまくる
            極限状態においてもそういう性の問題は食同様に本能だから
            ここまでリアルに描くならもっと主人公は最初の行為を拒否しまくればいいのに
            何故そこだけすんなりではないけどあんなアッサリとした受け入れ方だったのか?
            こんな酷い状態を描くならもっと主人公は攻めの態度に恐怖して欲しかったなぁ
            BLでやらなくていいほど追いつめられた状態を書くなら
            最後まで徹底的に書ききって欲しかった
            手を抜いてはいないんだろうけど
            何故そこだけBLらしくあっさり乗り切らせてしまったのか?
            ど〜しても拒否できない・嫌だけど受け入れるしかない
            その心理描写があったら続編での主人公の攻めに対する
            「怖い」発言がもっと活きて説得力を増したと思う


            【HOPE】の主人公が身を寄せたチームリーダー田村の話
            こちらは食に関するもっと苛烈な争いがあります
            そして、田村が酷い目にあうんですが・・・・・
            本当に酷いんですがどうしてでしょうか?
            あまり酷く感じないというか酷いのに淡々としている
            ここは読者が「酷くて読んでられない!!」となった方が
            小説として成功したと思うんですよね
            それは文体がリアルな割には「生」ぽさがないんですよね
            実際の痛みとして読者には入ってこないから
            「酷く痛いことされてるな〜」と他人事に読めてしまう
            かわいゆみこ「帝〜MIKADO」で主人公が酷い事されてるんですが
            アレは私トラウマになって読後すぐ本自体捨ててしまいました
            何というか主人公のされたことが自分のことのように苦しかったんですよね
            痛々しかった生きていたくない!と思った
            それとともに「何もない自分は幸せなんだ」と思えた
            文自体は木原さんのがお上手な感じですし
            物語の運びも木原さんのBLBLしてなかったし
            設定自体も木原さんのが殺伐として救いもないですし
            どこかリアル感も木原さんのがあります
            でも、読者にその痛みを苦しみを共感させるというか
            体感?実際に自分に置き換えて恐怖する感覚はないんですよね
            それは木原作品大概に言えることで
            だからどんな酷い状態の主人公の作品を読んでいても
            本当の意味で読者は傷つかないので痛くて苦しくて堪らなくはなりません
            「帝」はもう一生読み返したくないのでそういう本のが良いのかは、わかりません
            どんな酷い状態を書いても淡々と読めるので
            「この木原作品痛いよ〜」と言われていても平気で読めるのはいいのかな?
            もう一度読み返すことができる本のがいいのかもしれませんし

            上手く表現できない自分がもどかしいのですが
            やはり木原さんの作品には痛みを書いても「痛み」が伝わらない
            「かわいそうだな〜」「苦しそうだな〜」と達観して見てしまう
            「痛み」として知覚はできるんですが、体感ができないのがもどかしいです

            極限状態小説はあまり読まないのですが・・・・
            「5分後の世界」のそれでも生に向き合う
            絶望の中の人間くささ
            何も自体は好転しないけど主人公の決断覚悟
            「ヒュウガ・ウィルス〜5分後の世界2」での
            本当に人類に必要なものは何か?を問い詰めた作者の姿勢
            (作品のクオリティ的にはこちらは「5分後〜」より劣りますが
             より作者が伝えたい事柄明確に描かれているので
             テーマが伝わりやすく作者の強い訴えを感じれます)

            「神々の山嶺」は登山小説なんですが
            寒さと空腹と体力の限界とやはり極限状態なんですね
            もちろん命も危なく、圧倒的な自然に翻弄されます
            それがすごくリアルなんですよ!!
            寒さの激しさも精神の消耗も空腹も
            そして頂上を目指すという確かな希望も
            飛来する思い出や自分の感情までも
            まるで自分自身が山を登っているように感じます
            これ以降、山に興味が出て登山家のルポや自伝も読みましたが
            実際に作者が体験したワケではないこの小説のが
            何故か私は登山の夢と絶望と「登らずにはいられない」気持ちが
            伝わったし体感として感じました
            これが小説家の持つ表現力かな?とも思いましたね
            実際に体験した人はその道のプロかもしれませんが
            文で伝える技術は作家のがプロというか
            ただ山を登るだけの情景なのに、すごく感動します
            漫画も出てるけど、小説は別の表現力で圧倒的です
            極限状態の生々しさと体感が欲しかったのですよ〜

            「永遠の島」では舟の上で孤立してしまった人の極限状態の話なんですが
            主人公が船に同乗していた男を自分の手で葬ってしまった後
            愛する自分の女に向かって
            「お前が亡くなれば良かったんだ・・・・
             俺はあいつを大好きだった。お前なんかよりずっと」と
            女をさらに葬ってしまうんですが
            BL的に言えば何というかこちらのがエロいような
            愛する女より男のが好きだったっと主人公は泣きながら訴えるんですが
            それが何か生生しいんですよね
            小説の完成度としては高くないんだけど
            (完成度だけならこちらのがいいかもしれません
             A川賞作家さんなんですが、ラストが何じゃこりゃ?でした)
            BL的にみるとしっかり関係していて執着がある木原作品より
            感覚が人間臭い分エロスがあるな〜と
            ただの友情なのに感情のほとばしり方が確かに愛なんですよね
            この作家さんは暴力や殺伐とした中に泥臭い恥ずかしい愛なんかを
            描いていて作者自身も照れているんですが
            そういうジタバタしてるカッコ悪いところが何か愛しいんですよ
            アガペーとエロスはある種の対になっているとすると
            そこにはやはり人間くさや生ぽさがあったほうが
            読者には伝わるものがあるんじゃないかなぁ?と


            う〜ん、これやはりBL小説やラノベしか読まない人は衝撃作かもしれないけど
            ちょっと色々読んでいる方などは
            「何か足りない」てなるんじゃないかな?と

            それと、この話がやりたいならBL小説として出すべきじゃないかなぁ?とも
            イイ意味ではなく、かといって悪い意味でもなく
            BL小説ではないと思います
            では一般小説なのか?というと
            上記に私が書いた通り一般小説としても物足りない
            それならば、しっかりとBL小説として書ききってくれた方が良かったような


            ただ、これをBL小説として出すことによって
            普段こういう内容を読んだことがない方が
            「こういう小説もあるんだよ」ということに触れたことはいいことなのかもしれない

            文で伝えるってすごく難しいことですよね
            プログとかこの感想文とかでも本当にちゃんと自分の気持ちを言えてるのか
            自信がないというか・・・
            そういう意味で文章を書く方はスゴイな〜と思います
            だから、私がこうやって木原さんの作品を色々言うのは憤死ものなんですが
            まぁこういう読み方もあるよ!てことで

            木原音瀬さん

            0
              私は木原さんはBL小説界ではトップの文章力
              もしかしたら一番文章力はあるんじゃないか?と思っています
              木原さんより上手い文章を書く一般小説はありますが
              木原さんより下手な文章を書く一般書の小説家もいますからねぇ
              ベストセラーになったあの作家や賞作家さんなどでも
              私個人的には木原さんのが文章は上手いな〜と思ったりもします


              あと、BL作家さんにしては珍しく三人称が徹底している
              意外と一人称もBL作家さんの場合は徹底はしていないんですよね
              何故なら攻受両方の視点(二人称)で書いた方が
              読み手には二人の感情が伝わりやすいからだと思う
              そして三人称となると多人称ぽく思われがちですが
              そうじゃなくって作者視点といいましょうか
              一人称は「私は○○した」「私は〜思う」と自分のことを
              自分で表現していくものですが
              三人称は「彼は○○した」「山田は〜と思った」などと
              外から主人公の行動などを示していくものなんですよね
              私がBL小説を読んで最初戸惑ったのは
              この一人称二人称三人称の切り替えが突然すぎたり
              ご都合主義だったり、徹底していなかったりしたことです
              文章の基本だと思っていたのでそれに慣れるまではビックリしました
              特に私は三人称の文体が一般書でも好きでして
              あくまで冷静に他人視点で語られる物語のが入り込みやすく感じています
              今では大分なれたので気になりませんが
              やはり綺麗な三人称を扱う木原さんは読みやすいですし
              自分やキャラにや物語に振り回されない文章に対する統率力を感じます


              登場キャラの感情を順序立てて書くのも上手ですね
              木原さんのキャラでは
              いきなり思いもよらない思考や行動に出るキャラはいずに
              読者に「こうならこう考えるのもわかるな〜」と
              ちゃんと納得させてくれます
              そういう当たり前のこともBL小説でもドリーム入りすぎていて
              「え?何でいきなりこうなるの??」つ〜ことがあるので
              丁寧な心理描写は物語を説得力をあげています


              また説明的な文のまとめ方挿入も上手いですよね
              キチンと調べて間違ってない情報なんだろうな〜と思う
              例えば【箱の中】のムショの描写も
              変にBLムショとして誇張して書くこともなく
              実際にないような酷いことを書くこともなく
              かといって、全然本物ぽくない甘い世界感でもない
              私はたまたまムショに入った人の手記やルポを読んでいたり
              そういう文学小説も読んでいたのですが
              木原さんが書くムショの中の雰囲気と違いがなかったんですよねぇ
              BLだとそこら辺(弁護士・警察など)適当にボヤかしちゃう人もいるのに
              キチンとしてるな〜と思いました
              また、自分の調べたことを全部書いて
              物語上そこまで必要のないような所まで長々と書いて
              小説としてのテンポとBL小説としての面白みを半減さしている方もいて
              やりすぎずやらなすぎず的確な説明&描写も上手です


              全体的に文の印象としてはリアルです
              痛い話が多いいと聞きますが、文自体は淡々としていて
              感情的でない分、私は痛みをある種緩和していると思う
              他人に自分のことわかってもらおうとしている熱い文や
              抑えても抑えきれないものをたたえている文のが
              物語として痛くなくても刺さってしまうことがあるからです
              木原さんのお話自体が上記のとおり
              しっかりした下調べ・丁寧な描写・納得のいく過程・無理の少ない心情であるため
              現実的な問題・トラウマ・痛み・葛藤を題材にしたとき
              「リアル」に感じやすく
              そういう完成された文体を持つ方がBL小説家としては少ない(いない?)から
              この的確で読みやすく感情的にならない文と相まって
              読み心地はいいのに重い話なのに私はサラっと読むことができます
              あくまで、外からその主人公の状況を読者が見ているって感じで
              感情移入を過剰にすることがありません
              それが他のBL小説と一線を画してるのかもしれません


              こういう綺麗な三人称の文体に出会ってない
              BL小説以外をあまり読まない方が木原作品を読んだら
              それはもう「新しいモノに出会った!」と思うだろうな〜と


              ただ、普通に純文学を読んでる方の意見のが私は同感しっちゃったり
              「木原さんはBL小説を書いてなければハマったのにな〜」と
              書いてあったんですが
              ・・・・そうなんですよ!!
              BL関係ない話の中でチラっと垣間見える男同志の愛憎
              同性愛関係なく抑圧された男だから持つ熱い面を
              一般書で読んでると「堂々と男同志で現実的な愛」を育むBLでは
              リアルであればあるほど物足りなさを感じる
              BLでのじりじりした愛はジリジリしていてもBLという中で
              出来上がるのが決まっている愛なんですよ
              それが一般書だとどんなに男女の愛より深かろうが
              その愛情には確約が何もない
              そういう始まりも終わりもない男同志の関係性を読んでいると
              始まりもハッピーエンドもあるBLでは違うベクトルのものを求めてしまう
              でも、バッドエンドをBLでは求めてないんですよ
              どんなに辛いことがあっても最後はハッピーエンドなのがBLの良さ
              だから、木原さんはBL以外でBLになるか?ならないか?の
              微妙な男同志の愛憎を書きながらバッドエンド系を書いていたら
              もしかしたらすごく好きだったかもしれないな〜・・・と
              私がそう思ってるだけで
              木原さんの作品が良いものであるのには変わりはありません


              以上、ベタ褒めしましたが
              それではすごく木原さんの作品が好きなのか?というと
              私は別にそれほどでもないというか・・・・
              感動の度合いも期待したほどではなく
              かわい有美子【上海】 榎田尤利【夏の塩・夏の子供】のが
              私は泣けたかな〜
              BL小説以外読まない方にとってはこの木原さんの作品は衝撃だろうとは思います
              それぐらいBL小説の中では優れている点が上記のとおり多いいです
              私が泣けたと上げた二作よりも文章力や総合力としては上かもしれません
              そして、これは私の感覚でそうなだけかもしれません
              そんな私の個人的な感覚で何故完成度の高い木原作品よりも
              完成度的には劣る【上海】【魚住くんシリーズ】のが泣けたのかというと
              情感があるんですよね・・・・
              もちろん木原作品にも情感はあるんですが
              五感に訴える部分は少なかったんですよ〜
              例えば「雨の化石」というN木賞作家の人の短編なんですが
              雨の香りを本を読んでいると感じるんですよ
              そして悲しい場面じゃないんだけど、その雨の香りを感じると
              読者はすごく切なくなる
              主人公の感じる切なさを臭いという五感で追体験してしまう
              またベストセラー「5分後の世界」のラスト
              少尉の飛び出した目玉包んで元に戻し入れ痛み止めの麻薬を打つシーンを
              イタイ!気持ち悪い!酷い!怖い!!
              なのに、何故かすごく感動するし男の色気を感じます
              怖すぎて読み返すのがイヤなほどの文体なんですが
              そこにはその行為を表す以上の覚悟と意志と苛烈さがあいまって
              読み手に感情でない主人公の行動で何かが伝わってくるんですね
              その他にも色々抜粋できたりしますが・・・・
              BL小説でそこまで択一した文は五感に訴える文はなかったりします


              ですが、作者が何を伝えたい!と思った時
              それは技術的な文章力に頼るのではなく
              作者が今まで培ってきた感覚や手に馴染んだ文体
              訴えるテーマによって読者にその情熱は伝わるのではないか?と
              それが情感のある文体だと私は思っています
              「上海」では片思いしている受けが攻めとダンスを踊るシーン
              見返りを求めない献身的な介護・短い二人の蜜月・船の別れのシーン
              「魚住くんシリーズ」では鮮やかな友人たち・おいしそうなインド料理
              病気の少女との出会いと別れ・クリスマスの病院
              飛びぬけて上手い文じゃないんですが
              作者の愛情がところどころに如実に現れています
              それが作品自体を暖かく優しいものになっていて
              作り上げた感動や優しさじゃなく、そうなってしまった・・・・という感じがします
              私は榎田さんの作品をそこそこ読みましたが
              他作品では優しさは感じても作品までも包み込む大きな愛情とまではいかず
              この「魚住くんシリーズ」のみに感じたりするので
              それは作者がどうこうできるものじゃないのかもしれません
              またこの「魚住くんシリーズ」でも完璧に私は納得はしきれないんですが
              それでも作者が「綺麗な話」を書くよりも
              訴えたいこと書ききりたいことがあって出来上がった作品だと思います
              かわい有美子さんは、これは私の感覚とあうだけかもしれませんが
              所々ですごく情緒ある情景描写をするんですよねぇ
              それと「ああ!その気持ちわかる」「そういう時ってわかる」という
              すごく共感する情景があって
              それがBL小説なのに外から見て感動するのではなく
              共感して自分を重ね合わせて感動してしまうという・・・・


              木原はあまりに文が統制されているが故に
              「お話」で泣かされてしまうんですよね
              上手い文は「お話」を伝えるのにすごく良く作用して
              良いお話をより良く感じる
              そこでもう一歩、暖かみや優しさにあふれた
              感情が溢れ情感が篭った文が合わさればなおさらいいと
              冷静に正確にわかりやすく整った文で良く作り込まれて上手い
              だけど、その特性故に『生』ぽさが足りないのかもな〜と
              『生』ぽさはお話がリアルであること
              共感を産むこと感動することとは別で
              私は『五感に訴える表現』だと思っています


              私はBL関係なく小説を読む時は
              そういう『生』ぽさが好きなので完全に好みなんですけどね
              上手いからこそ、勿体ないな〜と私は感じる作家さんです


              たま〜に感情的になりすぎて上手さで行ったら及ばないんだけど
              作者の情熱だけは伝わる!という作品に出会うと
              そういうのはやはり読者にも伝わると私は信じてるんですよね
              そして読者としては作者から与えられるモノだけではなく
              小説として物語以上のモノを読み取れるようでいたいなっと思っています


              良くできたプロットを伝えるための手段としての文じゃなく
              プロット以外のものを小説には求めています






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