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    • 2014.11.05 Wednesday
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    【お菓子の家: 〜un petit nid〜 】

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       【夜明けには優しいキスを】のスピンオフ

      すごく読みたかったDV攻め君のその後です
      この【夜明けまで〜】のすごいところはBLではパターンの一つである
      酷い男に虐げられていた受が優しい攻とくっつく話なのですが
      酷いDV元彼を捨てて攻との幸せな生活に走るのではなく
      元彼がある程度立ち直るまで攻を置き去りにして
      じっとず〜っと尽くし続けてあげているのです
      それが我慢するという受動的なモノではなく
      DV男を「誰かを愛せる人間にしてあげよう」という献身的な
      普通BLでは攻のみに与えられるような健気なほどの愛情を示します


      受に対して酷い男が出てきて、そいつから受が離れていったり
      酷い男が打ちのめされたりはありますが
      受が恋愛感情とは別の深い愛情で
      酷い男を立ち直るきっかけをあげる話というのは中々BLで見かけず
      「すごい話を書くな〜」と思ったものです

      今回はそのDV男が優しく慈悲深い受から離れ
      どうには立ち上がろうとするも中々上手くいかず
      頑張ってはいるけどネガティヴで明るくなくトラウマ持ちで
      ひねくれてる・・・・というところからスタート

      【夜明けには〜】の受によって
      自分の愛情のかけ方は間違っていること
      自分がただ優しい愛情だけを求めるいること
      それが自分の今の性格では上手くいかないこと を理解しています

      昔はそれすらもわからずに
      「こんなに愛してるのに何で思い通りにならないんだ!?」て感じだったのでしょう


      私の大好きなN〇Kでストーカーする人々の特集がされていたんですが
      その人たちは追い回し一方的に愛情を持っているだけなのに
      「恋愛している」と思い込んでいる場合があるそう
      だから、迷惑をかけてると思ってない
      注意すると愛し合ってるのにそれを阻止する人が現れるわけだから
      怒りがこみ上げたり、もっとストーカー激化しちゃったり・・・・
      まずはカウンセリングとかで
      「あなたが勝手に思い込んでいるだけ」という
      当たり前のことを自覚させることが大事だそうです
      (違う方もいて、悪いことしてるけどやめられないという場合もあるそうで
       一概には言えませんが)

      元DV男の主人公・加瀬は「自分の愛し方は間違っていた」と
      この第一段階の自覚は前回の受主人公に教えてもらったものの
      では「どうやってちゃんと愛せばいいのか」
      「どうやれば愛される自分になるのか」がわからずにいます
      その「愛されることを知り、上手に愛し返す」のが今回の話


      ま〜、丁寧な感動BLなのですが
      そこよりも、この加瀬くんが私の萌ポイントを突きまくった造形
      *180cm近い男らしい体型、黒髪、目つき悪い
      これ、私の好き要素が濃縮された造形です
      男らしい受が好きなのと目が鋭い黒髪受けが昔から好きなのです
      これで腹筋が割れていたら本当に堪らん
      かと言って、ムチムチガッチリの完璧な漢くさいのではなく
      スラっとした美形タイプが好きです
      *攻だったのに受になる
      私の前からのツボです
      上記の通りの私の好き受造形って攻の場合が多いい・・・
      なので本編で当て馬とか脇に攻として出てきて
      スピンオフで受という状態になったりすることもしばしば
      攻→受のクラスチェンジしてくれれば多少私の好き造形から離れていて
      それだけで嬉しかったりします
      崎谷はるひ【チョコレート密度】とかもだから好きですし
      最近だと秀香織里【他人同士】とか面白かった〜
      ゴツすぎず華奢すぎずキリっとした強気な攻が
      受になるのとか好きだわ〜
      *性格が悪いどうしようもない男が相手にのみ優しかったり可愛くなる
      【透過性恋愛装置】【言葉ノ葉ノ世界】【真夜中に降る光】
      【くちびるに銀の弾丸】【恋のはなし】とか好き
      最初の性格が悪ければ悪いほど恋愛した時のギャップが可愛い
      性格の悪い攻とか受とかって好き嫌いが分かれて
      余りの性格の悪さに「いくら後から可愛くなってもムリ!!」という
      感想をたびたび見ますが
      BLというのは女性向けでファンタジーなので
      男の悪いところとか余り必要ないのかもしれませんが
      「そこまで悪い男が恋愛で変わってしまう」というのが
      最大のファンタジーだと思います
      実際は中々性根腐った奴は治りませんし
      治すには人一人の人生をまるごと捧げるほどの情熱がないと
      中々難しいと思われます
      (仕事もお金も時間もすべて捧げて
       さらにカウンセリングとか付かないと厳しいかなぁっと思う)
      それが「恋愛で変わる」って素敵じゃないの〜っと
      別に男女モノでもやってよさそうですが
      男女だと漫画や小説と言えど現実的なわけです
      「そんなに変わるわけないよ〜」とつっこみ心が出てしまう
      ツッコミいれさせないように説得力持たせるとすると
      それはもうドロドロの重い話になると思われる
      純文学では結構そういう話があって
      「悪い奴がどうにか愛情を求めてもがく物語」ありますが
      結局最後はリアル路線で行くと、中々完璧なハッピーエンドはありません
      バットかバットの中に希望が見えるか、
      これからどうなるんだろうね〜という終わりの見えない終わりとか
      完璧なハッピーエンドに出来るのはBLならでは!
      ちなみに実際すごいもう恋愛とは言えない
      お互いトラウマ持ちのグチャグチャ愛憎話を知ってますが
      そちらはやはりバットではないけど、二人ともを救うべストEDはないのかな〜という
      重々しさです


      以上の私の萌ポイントがギュギュッと入っていて
      もう大好きすぎた

      お話の良さもそうだけど萌悶えた〜


      「愛されたい」と思うBL主人公は多いいけど
      どうやって愛されればいいのかわからなくって
      「自分は愛されるような人間じゃない」と思っていて
      実際、とっつきにくく可愛げがなく
      特別見た目が綺麗でも素直なわけでもない
      (BLだとなんだかんだと見た目は綺麗で
       主人公が思っているよりは周りから一目置かれていたりするし
       主人公が思っているほどクールでなかったりするものですが
       この加瀬くんは愛せないと思うのもしょうがないな・・・・という
       造形だったりするのです)



      両親がなくなり、預かり先で虐められて
      すっかり他人を信じられなくなり
      そして愛されたことがないから、どうやって愛していいのか分からず
      少しのことで他人を疑い、距離を取ってしまう
      でも本当は寂しくて仕方ない
      寂しいけど他人との距離の取り方がわからないから
      さみしさや苦しさの埋め方がわからない

      この辺りの加瀬くんのコミュ障具合が丁寧でリアルでした
      BL的でなく、リアルコミ障の思考回路に近い気がします
      好きで他人と接しないのではなく
      他人との距離の掴み方や接し方や対応がわからないから
      「それでバカにされたり、傷つけたり傷つくぐらいなら
       自分から他人を近づけない
       一定以上近づけない」というスタンス
      でも、そうやって一人になると寂しい
      寂しいけど他人といると自分が傷ついてしまう
      傷つきたくない・・・の永遠ループ


      そんな付き合いにくい気難しい加瀬くんのお相手は
      施設出の元ヤクザで自分の不注意で親友を亡くし
      その親友の妻と子供の贖罪としようとしてます

      これが・・・・何とも心が広い攻め様でして
      ひねくれててネガティブ変なところで突っ走る加瀬くんを
      根気強く見守り包み込み構い接してあげるのです
      面倒臭い加瀬くん自身ですが
      投げ出したり勘違いしたり突き放したり試したりしません
      ひたすら恋愛とは違うかもしれないけど
      暖かな優しさで距離を自然に測ってくれるのです
      他人との距離感を掴めない加瀬くんの代わりに
      攻め様の方が距離感を適度にいつも調整してくれている・・・という

      攻め様自身も大変な過去がありますが
      それを一緒に乗り越えるのではなく
      もうすでに自分の過去と人生を乗り越え
      悩みながらもしっかりとその過去を背負っていってます
      だから懐が深いのです


      前半のツンツン人見知りが嘘のように
      後半の加瀬はもう攻めが好きで好きで仕方ない様子
      本人はそんな自分にも思い悩むのですが
      客観的に見てる読者としては「可愛くってしかたがない」
      一々、いじらしいというか堪らなかった〜

      涙が出ちゃうシーンも多くて
      誕生日を祝われたことがない加瀬に
      攻め様がお菓子の家をプレゼントしてあげるところ
      このお菓子の家をすごく大事に思ってるのとか切ない
      ずっと大事にしようと思っていたのに
      苦しい思いでそんな大事なお菓子を食べきる様子も悲しい


      その大事なお菓子の家とリンクした夢の使い方も上手だったし
      クロネコも可愛かった
      BLでは難しい子供の使い方もイヤミがなくていじらしい

      凪良さんはこういう小物とか小さなエピソードの繋ぎ方が上手い



      ハッピーED後の二人を攻め視点での【甘猫】
      本編の加瀬がグルグルしている分
      ベタ甘で加瀬が可愛くってしょうがない様子が嬉しい
      そして、攻め目線になっても加瀬はいじらしいの
      攻自身も思い出せないほどの些細な戯言で言った
      「クリームいっぱいのクリームパン」をセッセッとこしらえたり
      他に好きな女ができて家を出て行くことになっても
      近くに住んで攻めがたまに会いに来てくれるのを待つんだって・・・
      こりゃ、可愛くってしょうがなくなるのも仕方ない!!


      挿絵も良かったです
      私結構、葛西さんの挿絵本を読んでいるのですが
      嫌いじゃないけど余り好きじゃないような
      でも、今回は葛西さん独特の乾いた線が物語にマッチして
      痛々しさと繊細さが出ていて良かったな〜
      書き込みがないさっぱりしているところも雰囲気にマッチ
      お気に入りは猫を頭に乗せてる加瀬と
      最後のお膝だっこです


      お話の深さや出来としては
      【生涯行き】のが私は小説として良く出来ていると思いますが
      萌と切なさと痛さと盛り上がりの緩急の付け方が
      BL小説としてこちらが面白かった
      ま〜、私が加瀬くんに萌えたんですよね

      凪良作品って脇役もいいのでスピンオフでないかな〜?という
      作品が多いいわりにスピンオフ本が出たのはこれが初めてだと思う
      凪良さんもこの二人で続きが書きたい様子
      是非とも甘〜い今後の二人が読んでみたいです
      あと、ヤクザさんの方もお相手がいたらいいのになぁっとちょっと思った


      【天涯行き】凪良ゆう

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         調度、これを読む前日にN〇Kで
        「何かしらの理由で家族から愛情をもらえなかった人々」の討論会?
        話し合い?の番組がやっていてボ〜と見てました

        「父さん、母さんと聞いても自分には誰も浮かばない
         同じ読み方なのに人によって思い浮かぶ人が違うのが不思議で堪らなかった」
        「皆、普通に家族の話をするでしょう
         でも私にはその当たり前のことが出来ない・・・
         それだけですごく他人に壁を感じで孤独になる」
        「心に大きな穴が空いていて、どうにかしてそれを埋めようとする
         周りも埋めたほうがイイと言うんだけど
         埋まらないんだよね。一瞬埋まった気がする時があるけど
         その蓋はすぐに剥がれまたそこに穴がある」
        「穴を埋めようとするとますますそこに穴があることを自覚してしまう」


        ちょっと言葉は違いますが↑のようなことを語っていました
        昔し、「最〇の家族」が話題?になってる時だったのですが
        (M上龍さんの小説です)
        「何も知らない人にわかったように他人の苦しみを語って欲しくない
         そうやってわかったような人がいるから、ますます苦しくなる」みたいなことを
        色々家庭が大変そうだった友人から言われて
        「私は彼女に何もできないのかな、ちょっとした私の発言も傷つけてるのかな」と
        悩んだことがあります
        それを、親戚のお坊さんに相談したら
        「何もできなくてもそばにいて、いつでも味方でいてあげなさい」言われた
        その時、私は何だかちょっとモヤモヤしたんですよね
        それは本当に「何もしないのと同じではないか?」と




        N〇Kの続きでは司会の方?はそれを受けてこう答えてました
        「その穴はずっと以前に出来たものだからね
         傷ついて出来た穴は、その直後じゃなければ塞がらないものだよ」

        私は「時間」の話が出た時
        「いつか時間が解決してくれる」と言うのかと思ってしまったのですが
        そうではなく
        「すぐ愛情で癒されなかった穴は、穴が開いたままの状態で完治してしまった」
        と、言う感じでした
        実際に体に傷が出来た時、すぐに治療したり縫ったりすれば傷の跡は残りにくく
        完治も早いし、場合によっては普段そこに傷があったことも思い出さない
        でも、そのまま放置して膿んでただ自然治癒にまかしただけだと
        完治しても傷があった時のまま跡が残ってしまい
        見るたびに当時の痛みを思い出しやすい

        時間の経過は傷を塞いではくれるし、痛みを遠いモノにはしてくれるけど
        傷ついた事実と跡と痛みの記憶はずっと無くならない
        傷は傷がまだ生生しい時に治療しなければならない

        当たり前のことなんですが、改めて色々思ってしまいました
        そして、他人はそれに対して本当に無力なんだなっと
        「何かしてあげたい」「傷を癒してあげたい」と思っても
        傷跡が残り、痛みを思い出し、当時の辛かった記憶はあるけど
        その傷自体は塞がってていたりするのです
        では、心に出来た傷跡=穴は埋められるのかというと・・・・
        皮膚移植とかと考えればいいかもしれませんね
        他人の皮膚とかだと拒絶反応が出てしまう
        結局、自分の健康な皮膚を傷ついた所に移植するしかない
        ようするに、自分自身でしか穴をどうにかすることはできないのです



        BLでは傷つきトラウマを抱えた二人はお互いの寂しさをお互いで埋め合います
        ピッタリと合わさるように悲しみを補完しあうことが多いい
        そして、これはある種のBL定番の展開です
        私は定番が好きなので、それでイイと思いますし
        そういう話は上手くいくと切なくて好きです
        今回の【天涯行き】もある種、この王道展開でした


        でも、少し違います
        パッと読みは今までの王道の
        切ない傷つきあった人達が寄り添う話なんですが
        上手く言えないですが、お互いの寂しさをお互いで埋め合ってるのとは
        ちょっとだけ違うんですよね
        共依存の関係(私コレ大好きなんですが)ではないと思う
        私が前日にN〇Kを見てなかったら、ただの切ない話だったんですが
        このタイミングで読んで良かったです
        (調度、未読本5冊手元にあってどれ読もうか迷ったんですが
         自分の直感があたって良かった)


        本当、一読すると
        お互いのトラウマをお互いの愛情で埋めてる話のように感じます
        実際、文の中で『鍵穴のようにハマる』とあります
        これはお互いの寂しさを無意識で埋め合ってる自覚があるのでしょう
        ですが、この文に『(鍵が)開いてしまいそうだ』と続く
        埋め合うための「鍵」ではなく
        開くだめの「鍵」なんですよね



        攻めも受けも
        「俺が助けてやる」「(失った愛情以上に)愛してやる」などの
        相手の傷を自分が癒してあげる・・・・という能動的なことを言いません
        相手の愛情で寂しさや辛さがなくなっていってるのですが
        相手の愛情だけをポッカリ空いてしまった穴に埋めてるわけじゃないのです

        それがすべてのトラウマの元凶に会った後の受けのモノローグでわかる
        底がが抜けた心に底が出来たと思った後に
        『外から圧迫され、身体の内側に微量にたまった感情が水位をあげる』
        (P168 1行目)
        外から愛情を与えられることによって、自分の愛情で傷が埋まっていくのです
        他人の力(愛情)がないと傷は埋まらないんだけど
        それは愛情をその穴に注ぐことではなく、自分の愛情で埋めていく
        ・・・・という
        これが今までのBL王道と違うところかな?と思いました

        意識しなければ、
        ぽっかり空いた寂しい穴に攻めの愛情が注がれたように思います
        ですが、受けは攻めの愛情を知り自分の力で穴を埋められるようになっていくのです
        同作家【積木の恋】はどちらかというと
        前者の「寂しさが他人の愛情で埋まっていく話」だったように思います
        【積木の恋】は初期に書いた作品らしいので、
        それからの作家の成長と言うと私なんかがおこがましいんですが・・・・
        凪良さんの筆力や感情の深み何かが伝わりました



        攻め自身も悩みます
        復讐したいぐらい憎い男がいるんですが
        「相手に復讐したところで自分の悲しみは消えない」
        「相手に復讐しても相手は反省しないタイプの人間で意味がない」
        その憎しむことへの虚しさに気づいてしまいます
        ここでもBLらしく、受けの愛情で癒されて憎しみがなくなる・・・・とかになりません

        『どんだけ時間が経っても悲しいし、悔しいし、後悔とか色んなものを抱えて
         生きてくんだと思う。それが俺の人生』(
        p136 10行目)

        憎しみや苦しみを抱えたまま生きていくしかない、と覚悟をするのです
        そして、そんな攻めを見て受けも自分の人生に対して覚悟を決めていく



        二人は確かにお互いを支えにして、お互いの愛情が必要で
        その愛情によってトラウマを乗り越えたかもしれない
        でも、よくあるBLトラウマ話のように悲しみや苦しみから開放はされてない
        癒されたり助けられたりお互いの傷を埋め合ったりできていない
        愛があっても傷は簡単には癒えないと、しているのが新鮮だった
        BLでの愛って万能アイテムだからね
        愛があれば大概が許されるし
        愛だけで大概のモノを乗り越えてしまっていてる
        それを愛があっても無理なものは無理!
        でも愛がなければ幸せにはなれない
        っというのが、今までにない法則?でした


        二人はお互いの愛情によって補完しあうのではなく
        他人の愛情により変わっていき、それにより自分が強くなり
        自分自身の過去や苦しみを自分の力で乗り越えて
        行きます
        助けられるのではなく、自分で自分を癒していくのです
        文で書くと大したことなく感じますが
        相手の愛情を得ることによって、傷つきながらも強くなって
        一番恐れて苦しんでいたことから目をそさらずに自分で乗り越えるというのは
        途方もない労力と痛みと恐怖と精神力ですよね
        BL抜きにして、中々コレらのものとは向き合いにくいものです
        一般小説だと最近A川賞にノミネートされたM城0太郎【熊のBA所】とか
        そういう恐怖からの脱却話として好きだったりします
        (関係ないけど、昔から好きな作家さんだから賞とって欲しいな〜
         しかもあの作風で純文学賞とか)

        作家さんとしてそれを突き詰めて書いた凪良さんはスゴいな〜と思いました
        BLというジャンルの中の作家さんですが
        トラウマや復讐の話のBL王道にあてはめなかったのがスゴイ
        それでいて、ちゃんと現実に沿った「救い?」を作家が模索しているのが伺えた
        BLで泣けるモノはいっぱいあります
        切ないものや悲恋もある
        でも、小説という観点で見た時に「BL定番」の中で泣かせるのは違うんですよね〜



        ムショものだと木原さんの「月に嗤う」「箱の中」「檻の外」がありますが・・・・
        私は個人的にそんなに・・・・だったりします
        BLとしては面白いんですが、
        BLらしくないテーマを持った出だしだったのに
        結局、作家が掲げたテーマが突き詰めきれずに
        最終的にとてもBLらしくなってしまったのが私は残念でした
        攻は自分の寂しさの穴を自覚したことからひたすらに受の愛情を求め
        受は信じていた世界が崩壊したことから、自分だけを信じ求める攻を必要とする
        それは愛情ではあるけれど
        お互いに自分の寂しさから逃れるために相手の愛情に逃げた気がしてしまった
        BL的には正しいのですが、これでは二人の心の闇は何も解決しない
        最終的に、この結末でもいいから
        それに至るまでに二人ともに「何故、この人を求めなければいけないのか?」を
        お互いの寂しさに焦点をあてて問いただして欲しかったのです



        この本では、最後の方の3年半も数行で済ますのではなく
        ゆっくりじっくり書いてくれたのも良かった
        受けの酷い過去もじっくり書いています
        (読むのが辛かったけど)
        過去の辛い話は意外とBLだとサックリ数行で終わらす作家さん多いいんです
        「昔こんな辛いことがありましたよ」みたいな書き方で
        現在の受けの苦悩やトラウマっぷりを読めば十分苦しさが伝わるので
        それはそれでbl小説はイイと思ってます
        BLって萌え話を読みたいのでそこはあんまり触れなくてもいい側面がある
        その辛さを全面に出してしまうとBL小説としての面白さは軽減したりしますし
        BLとしての形を追求するなら余り辛い過去話はツッコんで書かなくてもいい


        ただ私が最初BL小説読んだ時は、暗〜い文学系小説が好きだったのもあって
        「え?そこをそんなに胆略してしまって良いの?」なりました
        たまに、じっくり書いているのもありますが
        ジュネぽい痛い系BLにして、どうもやはり心の痛みというよりは
        エロを絡めて被虐系BL萌に訴えていたりする気がする

        今回はじっくり書いてるわりに、BLエロに走りすぎてないのがいいんですし
        受けが必要以上に悲劇のヒロイン気質じゃないのも良かったし
        この話にはある程度の辛い過去話は必要だったと思います
        辛くて痛いんですが、読み心地は重くないです


        あと、他の凪良さんの作品でも思いましたが
        BL小説なのに悪い奴に何も制裁が加わらない
        木原さんの作品もそうですね
        それが変に現実的だな〜と思います
        概ねのBL小説は悪いことしやつには何がしたの償い?があるものです
        人づてにその後があって落ちぶれていたりするのですが
        実際、現実には悪いことしても何も起こらない場合が多々あります
        人を傷つけても何も感じない人もいます
        「悪いことをした」と思ってないのだから罪の意識もなく心も痛みません
        そうすると、傷ついた者だけが辛いんですが
        そういう場合もなきにしもあらず
        創作物の中でぐらい悪者には制裁が欲しいところですが
        そこをしないのも凪良さんの作風な気がします
        (悪い奴をただ野放しにしているのではないというか
         どうにもならない現実というか)



        BLと普通ぽさの兼ね合わせがうまいのと
        BL萌を散りばめながらも
        現実に沿ったトラウマの見せ方をしているのが面白かったです
        後半の20ページぐらいからはずっと涙出ました
        ワンワン泣くんじゃなくて、ポロポロ涙が自然に溢れてくる感じです
        切ないとも寂しいとも違うんですよね
        一番辛い時期は過ぎたし、数年後には幸せになれるビジョンがあるのに
        読んでいて涙が出てしまいました
        ラストはあからさまではなく静かに終わったのも余韻があって良かったです
        【恋愛前夜】でも思いましたが
        BLとしてはちょっと物足りないような
        ドラマチックさが欲しいところなんですが
        作風の口当たりの柔らかさや、意外とBL王道の展開とかのわりに
        テーマ自体はよく思量されているので
        凪良さんの作品はこういうラストでいいのかな〜と思いました




        普通に読めば普通のBL小説なんですが
        作家さんなりの行き着いた答えがあり
        それをどうにかしてキャラに吹き込もうというのが感じられました


        ただの寂しさを埋め合うBL小説じゃないんだよ!というのが
        少しでも伝わればいいな〜と思います






        それと、凪良さんはあまり後日談や続編ものを書きませんが・・・・・
        今回に限らずに甘甘な続編が短編でもいいから読みた〜い
        幸せイチャイチャしてる二人が読みたいよ〜!!!



        【恋愛前夜】

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           幼馴染ものです
          さらに上京ものが絡んでいていて
          結構設定とかはベタだと思います


          虐待されていた攻めを受けちゃんが助けたり
          漫画化になるという夢を幼い頃から持っていて
          確固たる意思があるので一人でいるのが平気な攻めに対して
          軽く劣等感を持ってしまう受けちゃん
          イジメにあっている受けちゃんを助ける攻め
          攻めは受けちゃんを恋愛感情で好きなのに
          友達にしか思えない受けちゃんはふんぎりがつかずに
          そのまま上京する攻めちゃんと離れ離れ
          離れ離れになって初めて恋心に気づく・・・とか



          王道だと思いますし、普通っぽい
          (作者が普通を目指していたらしいので狙いが成功している)
          そういう王道展開なのにただの王道にならなかった部分が
          凪良さんの作家としての上手さじゃないかな〜と思います
          例えば、主人公を虐めた相手に対して攻めが反撃するんですが
          最終的に助けた攻めのが退学することになります
          虐めに対して大人たちは後ろ暗い思いを抱きながらも
          結局糾弾しきれずに逃げてしまうんですよね
          その後、イジメに加担してしまった友人が誤ってくるんですが
          主人公は「謝るなら最初からするな」と許せない
          変に寛大だったり優しすぎない
          そして、いじめた人物は特に小説の中で制裁されたりしない
          悪いやつのまま主人公と和解することもなく退場します
          そういう細かい描写がBLなのにリアルでした
          BLは夢・妄想・萌みたいなもの
          その中でほんの少しのリアルな差し込み方が作者の腕の見せ所
          心情描写を繊細するか、主人公に感情移入しやすくするか
          情景描写で読ませるか、文体を整えて説明をわかりやすくするか
          主人公の環境を現実に則した見せ方をするか
          いろいろなやり方があると思うんですが
          凪良さんは主人公の心情の丁寧な描写
          社会や周りの情景の現実感を程よくさりげなく織り交ぜるのが上手です
          これが崎谷さんだったら虐めた奴はものスゴイ悪者になり
          後からガッツリ制裁・成敗されると思うし
          受けに言い寄る女の子はもっとねっちこく書かれると思う
          (最近崎谷さんの本を読んだので何となく比べてしまいました)
          そんなに、周りの人たちはイイ人ばかりじゃないけど極悪人ばかりでもない
          主人公達も優しいけど弱いだけだったりもしないし、聖人君子だったりもしない
          そのさじ加減が調度良かった


          主人公がいつまでも友人の一線を超えられないのも
          「ウジウジしてないで決断しろよ!」てならずに
          「迷うのもわかるな〜」と思ってしまった
          人間的に好きだけど、同性だから愛せはしない
          その微妙な境界線がちゃんと感じられた
          BLだとこの友情から愛情への以降がスムーズなんですよね
          で、安直に体の関係を書ききらなかったのも好きでした
          「友としか思えないけど寝ることは出来る」って同性同士は無理でしょう
          同性でエッチは出来て、特別に思っているのに愛情じゃないってなによ?と
          たま〜に思ってしまいます
          特に受けがそうなっている場合はそうそう男相手に女役はできないだろ?と
          攻めの場合は性欲って思うこともできるけど
          (そこを突っ込むとBLは成り立たなくなる話もあるので
           ゆる〜く楽しんでいるのですが
           また、そこを上手く納得せさてくれる作家さんもいますし)
          【HOLD OUT!!】という少女漫画で主人公が変な男に愛されまくって
          最初は振り払って拒否しまくるんですが
          最終的に彼を親友と認めてしまう話があります
          それは少女漫画なので恋愛に発展しないまま終わってるんですが
          ちゃんと「友情だけど愛情じゃない」のがわかるのに
          その友情が他にかえられないくらい大事なものなのもわかる

          BLだとその「何ものにも変えられない友情」=「愛情」になりがちなんですが
          このお話ではちゃんとその違いがわかるのも良かった

          で、そんな友情が愛情に変わる描写も丁寧でした
          告白→離ればなれ→「離れたくないお前が好き」てなわかりやすい展開なのに
          この3プロセスの間に流れる時間がゆっくりなんですよね
          劇的な何かがあるのではなく、ゆっくりゆっくり離れる準備をしたり
          言葉をかわしあったり、普段通りにご飯を食べたり
          そういう日常の中でドラマチックな演出なく別れていく
          だからこそ、最初の中編【隣の猫背】の最後の最後で
          自分の恋愛感情を自覚する受けに感動しました
          なぜ好きになったのかや寂しさをクドクド書くのでなく
          彼がデビューする漫画の題名を見て攻めの気持ちの重さに気づく
          その数行で受けが恋愛を自覚したのが伝わったし
          あんなに「恋愛」を拒否していた受けが恋に堕ちるのも
          仕方ないというかありえると思いました
          これが、普通に高校時代とかに出会って主人公に告白する内容だったら
          漫画であんなに頑なだった受けが恋愛に落ちるのは在り来たりに感じてしまうけど
          丁寧に幼馴染で色んな思いを二人で乗り越えてきたからこその
          この恋への堕ち方だと読むと、納得でるというか
          心に響きます


          小説ってたくさんの文章で読者に理解を求めることより
          短い文章でどれだけ感動をあたえて
          それで物語の全てを理解させることの方が難しいし
          また、そのたった一文が「小説としての全て」であるとも思うんですよね〜
          まぁBLにあまりにそういうのを求めていたりはしないんですが
          たまに、そういう作者の意図と構成力と文章力と展開力と物語が
          ガッツリはまっているのを読むと嬉しかったりします



          表題作【恋愛前夜】
          主人公の受けが上京して攻めに会いに行くも
          すでに攻めには新しい恋人がいて・・・
          こちらも結構王道展開です
          ちょっと砂原糖子「夏雪」にも似ているかな?
          細かいところは違うけど雰囲気とか


          私ウジウジ・メソメソ受けが苦手なので
          「そんなに好きならハッキリ告白しろよ」
          「攻めもまだ好きなんだろ?サッサっと受けをどうにかしろ!!」

          いつもはイライラしちゃうんですが
          今回はそうならなかった
          「お互いの気持ちを言えない二人の気持ちがわかるな〜」となった
          だって、攻めの恋人の漫画家の先生が魅力的なんだもん
          キレイで可愛くて何でもできる完璧な恋人とかじゃありません
          ネガティブだし漫画以外なにもできなしいオネエだし
          情緒不安定でヤキモチ焼きだしで
          全然人間として出来てないけどそこがいじらしくて可愛い
          こんな先生を裏切れない&捨てられない!!
          オネエ先生を主役に考えてもBL王道展開なんです
          漫画以外の才能がなくネガティブなダメ人間でいつも悪い男に騙される
          そんな自分に自己嫌悪しているオネエな漫画家
          そこに真面目で誠実で優しい新人漫画家が現れる
          彼は昔の恋人が忘れられないみたいだけど
          何度も告白してお酒の勢いで寝て恋人になり
          最近は色んな意味で支えになり愛されてる気もしてきたところに
          昔の彼の好きだった人がやってきて・・・・・
          最終的に攻めは昔の人とちゃんと切れて
          「彼を忘れさせてくれたのはあなたじゃないですか・・・
           今はあなたしか好きじゃありません」とか言ってハッピーED
          崎谷さんの昔の作品にありそうな展開ですね
          そして、そうなってもおかしくないからこそ!!
          この先生がやっと手に入れた誠実な恋人を昔の男に取られるのが
          かわいそうに思ってしまうの〜!!
          主人公は幸せになってもらいたい反面・・・今回は途中で
          「主人公が攻めにフラれるEDもありじゃないかな」と私は思ってしまった
          ラスト、攻めと先生が和解するのでなく
          主人公と受けが気持ちをぶつけ合ってそれでも理解する
          お綺麗すぎるんだけど、そこで泣き崩れる受けの気持ちもわかりました
          主人公たちよりも先生の気持ちを思うと切なくて泣けました


          あと、受けが攻めや先生の漫画アシスタントにならずに
          ちゃんと別途就職したのが良かったな〜
          BL的にはアシスタントの方が流れがいい気もしますが
          誰かに頼らずに経済的に自立したのがスッキリした
          生活面を攻め様に頼るのは女ならいいけど男としてはどうかと思うのです


          話は王道で語り口も優しいのに虐待イジメなどの重いものを扱い
          でも、そこに固執しすぎず、かと言ってありきたりなオチを付けず
          ちゃんとそれ自体を適度に考えさせ
          二人の関係を進め仲を深める物語の展開に絡める手法
          萌と切なさをちゃんといれこんでくる凪良さんはうまいな〜と思いました
          お事件とほどではないですが、物語を動かす要素を入れながら
          それが全て二人の心情や距離感に絡めてあり
          ちゃんとBLを踏まえてありました
          先に崎谷さんの作品を読んでいたので、物語を展開させながらキュンもいれる
          この加減の上手さが引き立っていた気がします



          個人的に【積み木の恋】より、こちらのが泣けました
          何だろう?
          どっちも王道展開を上手く書いているんですが
          こちらの作品のがちょっとした小道具や人物の詰め込み方がよかったのと
          BL王道なんだけど現実感が適度にこちらのがありました
          あと、ラストが甘甘の二人とかで終わらないのが余韻があって良かった
          私が先生に感情移入してしまったせいもありますが
          ラブラブ甘甘で終わったらせっかく主人公が先生のために泣いた涙の意味が
          薄くなってしまう気がしたので


          本来私はオネエでウジウジしてる受けが嫌いなんですが
          好みじゃないのに先生は魅力的だったと思います
          そして、先生にも幸せになってもらいたいな〜
          楽しみでスピンオフが読みたいというより、先生を幸せにしてほしいので
          スピンオフが出るといいなっと思いました
          (でも凪良さんって続編やスピンオフ作品ないんですよね〜)




          【未完成】

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            これ原作読んで、すぐCD買いました
            個人的にハマった内容だったんですよ
            私が年をとったから良い話だったのかもしれません
            攻めが青いんですよ
            色んなことが思い通りにならなくてイライラして
            家族のことも信じられない
            友人といると楽しいけど本当のことは言えない
            恋人は可愛いけど愛してるわけじゃなくって性欲優先
            大人になっても何かイイコトがあるとは思えない
            今が楽しければいいけど、何か虚しい
            そういう若さ独特のモヤモヤが良く出ていたと思いました
            ただ、それがあまりに自分本位の愛情で感情的なために
            攻め様独特の優しさ・包容力・精神的強さ・カッコよさがないの
            そこが「攻め様は受けちゃんを助けるモノ」という
            BL黄金王道からは外れちゃうんだよね〜
            「受先生が主人公のどこを好きになったのかわからない」てなりそう
            ですが!!
            ババァになった今ならわかるの〜!!
            この若さ特有の青臭さ 自分でも自分を制御できない情熱
            好きで好きで仕方ないだけそれだけの愛情
            その一本木がいいなぁ・・・と
            私は美容師をしていたんですが、そこで高校男子が結構来てまして
            この主人公のように家庭に色々あって悩んでる子
            思い通りにならなくてちょっと悪くなってる子
            女の子にモテてるけど持て余してる子
            そういう子達が相談してきたりするんですよねぇ
            わざと、仕事終わりぐらいの一人っきりになる時間にきたり
            (え〜、仕事だからあれだけど帰ろう!て時に来るとちょっと複雑ですが)
            ちょっとアドバイスするとそれもそのまんま行動していたり
            身に付けてるものを褒めるとしばらく毎回それを付けてきたり
            うざったいけど可愛く感じたりしたもんですよ
            私は年下男は苦手ですが、思い通りにならない自分を持てあます若さは
            「カッコいい男」にはなれないけど微笑ましい感じなんです

            で、この主人公はBLカッコ可愛い年下攻めじゃなくって
            本当にいるとかじゃないけど、微妙にやる行動とかはリアルな気がします
            だからこそ先生が「しょうがないなぁ」と色々許して
            家庭環境とかを心配していく内に
            その向う見ずな情熱にほだされていくのもわかるかも〜と
            大人で大人の付き合い方も知っていて
            今まで色んな恋愛も重ねてきて
            諦めたり受け入れたり苦しんだり許したり計算したり
            酸いも甘いも噛み分けたからこそ
            何も計算しないでぶつかってくる不器用でどうしようもない
            自分の未来や可能性さえも愛情の前に投げ出そうとする主人公を
            先生はほっとけなくて愛してしまったのかもな〜と

            これ、私が学生の時とかに読んでいたら
            相手の負担になるのに家族にも友人にも恋人に対しても自分勝手で
            その癖、自分は好きな人の愛情を強引に欲しがり押切り
            意味のわからない愛情だけをむやみやたらに押し付ける攻めに対して
            イライラして嫌いだったと思います
            ラストの先生の「お前が未来まで捨てそうで怖い」と思うところとか
            攻めちゃんが愛しいからこそ、攻めちゃんの愛が向う見ずだからこその
            心情でだな〜と思って切なくなりました

            サガン「ブラームスはお好き」と言う小説で
            若くて美しい青年が年をいった主人公に惚れこみ
            晴れて二人は恋人同士になり幸せなものの
            最終的に主人公はその美しい青年との恋愛を自ら終わらせます
            それでも彼女を愛し追いかけてくる青年に
            「おばあちゃんなのよ・・・私おばあちゃんなの・・・・」
            この一言に色んな意味が込められてますよね
            彼の未来を自分がダメにしてしまうような恐怖
            周りの目に自分と彼がどう見えるかの不安
            彼の愛情がいつかなくなって、その時今より年を取り何もかもなくした
            惨めな自分の姿
            その全てを受けれて愛情を信じられない自分の弱さ
            彼と自分は全てが違うという疎外感
            若さや美しさは失われてしまうものですが、だからこそ越えられないものがある
            それを持っているものは気づけない残酷さとだからこそ美しいのかもな〜と

            この話はラスト付近も好きです
            二人の中ばバレてどうのこうの〜という劇的な展開になるでなく
            主人公は自分のやっていたことが相手をどれだけ追いつめるか気づきます
            そして、愛しているからこそ先生のそばを離れようとする
            自分が愛情を傾けるほど先生が傷つくのを知るんですよね
            気づいたなら二人でどうにか愛を育めばいいとも思いますが
            主人公は「今の不安定な自分自身」が先生のそばにいることを良しとしなかったし
            また先生はそうやって自分自身で自分の至らなさに気づいた高校生を
            愛情だけで縛ることをしたくなかったのでしょう

            で、何年かたっての再会
            主人公がちゃんと成長していてカッコ可愛い年下攻めに
            ちゃ〜んとなっていましたねぇ
            そして、そんな大人になった攻めだからこそ
            先生が可愛くなってる〜!!
            デレてる〜!!
            二人のその後の遠距離恋愛の話も読みたくなります

            ちなみにCDは前野さん×遊佐さん
            声のイメージがピッタリでした
            残念なのは一枚に無理やり納めちゃったので
            話の進みが早い&絡みのカットが激しい
            CDのブックレットにその後の二人のショートストーリーがあります
            予想以上にその後の二人が可愛く満足でした


            【夜明けには優しいキスをして】

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              最近好きな作家さんです
              話の中の説得力と一人称が徹底しているのが好き
              「なんでそうなっちゃうの?」というBLファンタジーが少ない

              BL小説って何だかんだとありながらも
              最終的には男が二人出てきてくっつくまでの過程を楽しむ話
              最後のゴール自体は決まっているので
              途中経過をどう面白く読ませるか?が大事なんじゃないかな〜っと

              すっごくあっさりこのお話を説明するなら
              昔の罪の意識から自分を罰するように追い詰め
              辛い仕事を選び、恋人のDVも甘んじて受ける主人公を
              攻めがどうやって立ち直らせるか?みたいな
              こう書くと意外と王道だったりしますし
              BLにおいて可哀想な受けちゃんではもっと酷い状態の人もいるのですが
              主人公の罪の意識の描き方がやり過ぎない丁寧さなのがいいです

              それと、BLでは可哀想な受けを優しい攻めが救ったところで
              普通はお話はハッピーエンドになるのですが
              こちらはそのDV男の救済まで書いてるのが良かった
              救済するといっても軽い気持ちでなされる優しさや同情ではなく
              それこそ受けが自分の生活や幸せや人生
              (攻めとのハッピーエンド)を犠牲にして
              愛情でも同情でも友情でもなくDV男に全てを尽くします
              それは献身的な可哀想な愛情ではなく
              全てを受け入れて納得した受けでDV男を受け入れているんですよね〜

              BL小説において、そういう当て馬酷い系の男に対する救済って
              中々書かれないというか
              書かれる場合はスピンオフで違うキャラが出てくる安易なものです
              他人が他人を本当に救おうとしたら、自分の人生を全て投げ出さないと無理です
              それが精神的な痛みであれば自己犠牲がなければ人を救えない
              こういう気持ちはBLでは攻→受、受→攻に対しては与えられる慈愛ですが
              それを別の人物に対して与えてるというのが珍しかったです

              そういう「自己犠牲的な愛情」を卑屈になるのではなく
              大きな強い気持ちで持つことができるようになった主人公の成長
              その成長に攻めの愛情が必要だったわけで
              不幸や状態から脱したのが攻めのおかげだけど
              能動的に動いていて結果的に不幸な受け自身が自分で乗り切った
              そういう強さを持つ過程があるのがイイ話だな〜と思いました

              「他人が他人を救うことができるのか?」
              「人は本当に憎しみを癒すことができるのか?」
              そういうテーマは一般書でも良くとりあげられていますが
              とても難しいテーマ中々答えが出ないものです
              M浦綾子「塩狩峠」 花村M月「ブルース」
              M本輝「優駿」 M上龍「イン・ザ・ミソスープ」など
              何かを脱する事の難しを感じるんだよな〜
              それとともに、一度暗い淵を見た人はそこを脱したいと思いながらも
              何も信じられない、信じられないから救われないという悪循環
              重いテーマをBL=男同志の夢愛物語でやるのは
              エッセンスとして扱う分にはいいけど、テーマにはしづらい
              それを結構真正面からこの作品は頑張ったんじゃないかな?と

              榎田 尤利【夏の塩・夏の子供】では
              魚住くんの成長を描いていて
              その中で病気の少女と魚住くんとのやり取りは
              魚住君が少女に対しての向き合いによって
              少女に希望と救いを与えたように感じますが
              結局完璧に救いを与えることはできませんでした
              それによって魚住君は人間として成長をしますし
              このお話は魚住君の物語で少女に対する救済の物語でないし
              BLなのであの締めでもいいと思いますが
              もし書ききるならどうなったのかなぁ?と思います
              魚住君はその少女のためにどれほどのことができたのかな〜?と

              崎谷はるひ【垂直線上のストイシズム】【平行線上のモラトリアム】
              攻めの昔の恋人?が堕落的な男でして
              それによって攻めが色々グルグルするのが物語の中心にあり
              その昔の恋人・靖那との関係や過去にどう主人公が決着をつけるか?が
              テーマとしてあると思うんですが
              「お前はお前可哀想だけど理解はできない」
              「理解を示す相手は俺じゃないし、俺じゃ救えない」
              「だから、もうお互い違う道を行こう(もうちょっかいかけないでね)」
              すっごく大人な対応だと思うし
              BLとしてはうざったい昔の男を排除するのはアリなんだけど
              心の傷を持っている靖那のその堕落的なところを含めて惹かれていたし
              靖那にかなり影響されている攻めが最終的にそれを切り捨てるようなやり方が・・・
              その靖那に振り回されてるダメな自分を含めて攻めの性格や人格なのに
              その自分の一部を否定してないものとしてしまう
              目を逸らしているだけで一生ソレを主人公の中にあるし
              また靖那は何も救われない
              靖那が救われないことには主人公は一生心のどこかに残る
              そういう乗り越えられない・救えない・投げ出すようなやり方なら
              こういう難しいテーマをBLでやらなければいいのにな〜と思いました
              色々悩んで答えが出ないのが当たり前の重いテーマで
              それでもそれなりに作者がBLの話の筋とは別に答えを出せるならいいけど
              出せないなら、そこまで掘り下げないで
              BLのエッセンスとしておいしい所だけ取れば良かったのに・・・・と
              崎谷さんはBL作家としてはすごく好きなんですが
              それ以外と小説的なテーマを持つと書ききれてない気がします
              (BL作家としてはすごく好きでコンプしてるほどなんですが・・・
               この話に関してはもうちょっと違う落としどころが欲しかったな〜っと)


              凪良さんは、感情の流れが丁寧なのと
              可哀想な受けが何でも持ってる攻め様に救われるだけでなく
              ちゃんと受けに覚悟や強さや男らしさがあるのが好きです
              あとがきの感じも作者が小説を丁寧に扱ってるのがいいです

              私はどうもBL小説を読む時にBL萌え以外のところも気になるんですよねぇ

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